【せん妄】は、高齢者の健康と生活を理解する上で重要な概念であり、介護福祉士国家試験やケアマネ試験でも頻出のテーマです。出題傾向としては、以下の点が挙げられます。
国家試験における出題傾向
国家試験では、せん妄に関する問題は、以下の点が問われることが多いです。
せん妄の定義と特徴
せん妄の原因
せん妄と認知症の違い
せん妄の症状
せん妄の予防と対策
ではまず、介護福祉士国家試験の過去問題からです。
最初からわからなくても当然という気持ちで挑戦してみましょう。
だた、解説を読むよりも、考えることで、記憶に残りやすくなりますよ!
過去問題に挑戦
介護福祉士国家試験 第32回 問79
高齢者のせん妄( delirium )の特徴として、最も適切なものを1つ選びなさい。
薬剤によって生じることがある。
症状の変動は少ない。
意識レベルは清明であることが多い。
徐々に悪化する場合が多い。
幻覚を伴うことは少ない。
正答1
介護福祉士国家試験 第36回 問41
認知症(dementia)の人にみられる、せん妄に関する次の記述のうち
最も適切なものを1つ選びなさい。
ゆっくりと発症する。
意識は清明である。
注意機能は保たれる。
体調の変化が誘因になる。
日中に多くみられる。
正答 4
ケアマネジャー試験 第26回 問32
次の記述のうち、より適切なものはどれか。3つ選べ。
高齢者は、急激な環境の変化があっても、環境への適応力は高い。
せん妄の有病率は、年齢とともに上昇する。
せん妄については、その発症に至ったきっかけで除去可能な要因がないか検討する。
身体疾患の治療薬の中には、うつなどの精神症状を引き起こすものがある。
統合失調症の陰性症状とは、妄想や幻覚をいう。
正答 2、3、4
ケアマネジャー試験 第20回 問32
次の記述について適切なものはどれか。3つ選べ。
老年期うつ病は、認知症と明確に区別され、認知症に移行することはない。
せん妄は、興奮を伴うことが多いが、活動性が低下するものもある。
せん妄の発症の誘因として、睡眠障害、薬剤、環境の変化などが挙げられる。
せん妄の治療は、誘因にかかわらず薬物治療を最優先とする。
統合失調症は、軽症化したとしても、その後症状が再発することがある。
正答 2,3,5
過去問題にふれたところで、せん妄の概要についてみていきましょう。
せん妄とは?

せん妄とは、意識が混濁し、思考が混乱する、意識障害の一種です。
具体的には、認知機能低下、見当識障害、幻覚、妄想
注意力の低下、不眠、興奮といった症状が見られます。
一過性のものであったり、1日の中で変動するものもあります。
原因は様々で、環境変化、高熱、感染症、脱水、アルコール、薬剤
脳の病気などが考えられます。
原因を取り除くことで症状が消失します。
夜間に症状が現れる場合を、夜間せん妄といい
昼間に活動の機会を作り、夜間に眠れる配慮が必要です。
せん妄の原因

感染症: 尿路感染症、肺炎など
脱水: 体内の水分が不足すること
薬剤: 特に精神科薬剤や鎮静剤など
環境変化:入院や施設入所など
代謝異常: 低血糖、低酸素血症など
脳の病気: 脳卒中、脳腫瘍など
手術や外傷: 手術後の合併症や外傷による脳の損傷
せん妄の症状

意識の混濁: 意識がはっきりせず、周囲の状況が把握できない
注意力の低下: 集中力が低下し、会話が続かない
見当識障害: 時間、場所、人物がわからなくなる
幻覚: 実際にはいないものが見える
妄想: 根拠のない考えが生まれる
興奮: 落ち着きがなく、興奮状態になる
傾眠: 常に眠たそうである
一過性のものであったり、1日の中で変動するものもあります。
せん妄の影響

せん妄は、患者本人だけでなく、周囲の人々にも大きな影響を与えます。
患者本人
不安、恐怖、混乱といった精神的な苦痛を伴い、QOLの低下につながります。家族
患者の急激な変化に戸惑い、精神的な負担が大きくなります。医療スタッフ
患者とのコミュニケーションが難しくなり、治療の妨げになることがあります。
せん妄の予防と対策

原因となる疾患の治療
感染症の治療、脱水の改善など、原因となる疾患に対して適切な治療を行うことが重要です。環境調整
明るい部屋で過ごす、規則正しい生活リズムを保つ、騒音を減らすなど、落ち着ける環境を整える。安全対策
転倒防止、誤嚥防止など、安全対策を徹底する。認知機能の刺激
言葉かけや簡単な体操など、認知機能を刺激する活動を行う。家族への支援
家族に対して、せん妄についての正しい知識と対応方法を伝える。
せん妄と認知症の違い

せん妄と認知症は、どちらも認知機能の低下を伴うため、混同されがちですが、大きな違いがあります。
せん妄の概要を把握できたところで、過去問題に再挑戦してみましょう。
過去問題に再挑戦
介護福祉士国家試験 第32回 問79
高齢者のせん妄( delirium )の特徴として、最も適切なものを1つ選びなさい。
薬剤によって生じることがある。
症状の変動は少ない。
意識レベルは清明であることが多い。
徐々に悪化する場合が多い。
幻覚を伴うことは少ない。

正答は1. 薬剤によって生じることがある。です。
せん妄は、様々な原因で起こる一過性の意識障害です。
その原因の一つに薬剤が挙げられます。
特に、精神科薬剤や高齢者に処方される複数の薬剤の相互作用が、せん妄を引き起こすことがあります。
他の選択肢について
症状の変動は少ない
せん妄の症状は、時間帯や状況によって大きく変動することが特徴です。意識レベルは清明であることが多い
せん妄では、意識が混濁し、周囲の状況を正しく認識できないことが特徴です。徐々に悪化する場合が多い
せん妄は、比較的短期間で急激に発症し、症状が変動するのが特徴です。幻覚を伴うことは少ない
せん妄では、幻覚や妄想を伴うことがよくあります。
介護福祉士国家試験 第36回 問41
認知症(dementia)の人にみられる、せん妄に関する次の記述のうち
最も適切なものを1つ選びなさい。
ゆっくりと発症する。
意識は清明である。
注意機能は保たれる。
体調の変化が誘因になる。
日中に多くみられる。

正答は4の「体調の変化が誘因になる」です。
せん妄は、感染症や脱水など、身体的な変化が原因となって、意識が混濁し、幻覚や妄想などを伴う状態です。
認知症のように徐々に進行するのではなく、比較的短期間で症状が出現し、また回復することも特徴です。
他の選択肢について
1.ゆっくりと発症する:これは認知症の特徴です。せん妄は急激に発症します。
2.意識は清明である:せん妄では意識が混濁することが特徴です。
3.注意機能は保たれる:せん妄では注意力が散漫になり、集中力が低下します。
5.日中に多くみられる:せん妄は昼夜を問わず起こりえます。
ケアマネジャー試験 第26回 問32
次の記述のうち、より適切なものはどれか。3つ選べ。
高齢者は、急激な環境の変化があっても、環境への適応力は高い。
せん妄の有病率は、年齢とともに上昇する。
せん妄については、その発症に至ったきっかけで除去可能な要因がないか検討する。
身体疾患の治療薬の中には、うつなどの精神症状を引き起こすものがある。
統合失調症の陰性症状とは、妄想や幻覚をいう。

解説
正答2,3、4
2. せん妄の有病率は、年齢とともに上昇する。
高齢者は、身体機能のや複数の疾患を抱えていることが多く、せん妄の発症リスクが高まります。
3. せん妄については、その発症に至ったきっかけで除去可能な要因がないか検討する。
せん妄は、脱水、感染症、薬剤など、様々な要因が複合的に絡み合って発症することがあります。これらの要因を除去することで、せん妄の改善が期待できます。
4. 身体疾患の治療薬の中には、うつなどの精神症状を引き起こすものがある。
特に高齢者は、複数の薬を服用している場合が多く、薬の副作用によって精神症状が現れることがあります。
誤答の理由
1. 高齢者は、急激な環境の変化があっても、環境への適応力は高い。
高齢者は若年層に比べて、環境変化への適応力が低下していることが一般的です。
5. 統合失調症の陰性症状とは、妄想や幻覚をいう。
妄想や幻覚は、統合失調症の陽性症状です。陰性症状は、意欲の低下、感情の平坦化、社会的な引きこもりなどを指します。
ケアマネジャー試験 第20回 問32
次の記述について適切なものはどれか。3つ選べ。
老年期うつ病は、認知症と明確に区別され、認知症に移行することはない。
せん妄は、興奮を伴うことが多いが、活動性が低下するものもある。
せん妄の発症の誘因として、睡眠障害、薬剤、環境の変化などが挙げられる。
せん妄の治療は、誘因にかかわらず薬物治療を最優先とする。
統合失調症は、軽症化したとしても、その後症状が再発することがある。

解説
正答:2, 3, 5
2. せん妄は、興奮を伴うことが多いが、活動性が低下するものもある。 せん妄は、興奮状態だけでなく、逆に活動性が低下し、意識が混濁する状態になることもあります。
3. せん妄の発症の誘因として、睡眠障害、薬剤、環境の変化などが挙げられる。 せん妄は、様々な要因が複合的に作用して起こるため、睡眠不足や薬剤の副作用、環境の変化などが誘因となることがあります。
5. 統合失調症は、軽症化したとしても、その後症状が再発することがある。 統合失調症は慢性的な疾患であり、一度症状が出ると、完全に治癒することは難しく、再発を繰り返すことがあります。
誤答の理由
1. 老年期うつ病は、認知症と明確に区別され、認知症に移行することはない。
老年期うつ病は、認知症と共存する場合があり、うつ病が認知症の症状を悪化させることもあります。
4. せん妄の治療は、誘因にかかわらず薬物治療を最優先とする。
せん妄の治療は、原因となる疾患の治療が最も重要です。薬物治療は、症状を緩和するための補助的な治療法の一つです。
まとめ

いかがでしたでしょうか?せん妄は、高齢者や入院患者にとって、QOLを大きく低下させる可能性のある状態です。
介護者は、せん妄の症状を早期に発見し、適切な対応を行うことで、患者の苦痛を軽減し、安全なケアを提供することが求められます。
介護士、ケアマネは、せん妄の患者と接する機会が多く、その症状を早期に発見し、適切な対応を行うことが求められます。
観察
患者さんの様子を注意深く観察し、変化に気づく。記録
変化を正確に記録し、医療スタッフと共有する。コミュニケーション
患者さんと丁寧なコミュニケーションを取り、不安を取り除く。環境調整
安全で快適な環境を整える。家族への支援
家族の不安や悩みを聞き、必要な情報を提供する。
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